まずよくありがちな質問ですが、この企画のアイデアはどのように生まれたのですか。
このアイデアは私が常々音楽の中に入れたいと思っていたこのようなシナリオを見つけることが出来ないフラストレーションから起こりました。私はこの着想を暖めてきましたが、それを出す機会がなく待ち続けました。そしてある日、困難に正面から立ち向かって自分自身で音楽物語を書こうと決めました。
物語を書く時、すでに脚色されたイメージや音楽のことを考えていましたか。
アドベンチャーの1シーンを書く時は後で演出家によって解釈されるイメージが必然的に頭にあるものです。実は私はそれぞれのシーンを音楽を創るために書きます。ですから書きながら音楽のスタイルを思い浮かべます。しかし、テーマやメロディーなど細部まで正確に浮かぶことはめったにありません。これは違った精神状態が要求される仕事です。そのためには大変な集中力が必要で、原稿執筆中は作曲の詳細について考えるのに最適な時間ではありません
執筆はどのように進みましたか。なかなか進まない時や思うように書けない時、白紙の原稿を前にした不安などはありませんでしたか。
最初の出だしの部分を考えるのに非常に苦労しました。この企画は最終的には5時間近くのものになったので冒頭の原稿をうまく作ることが非常に大切でした。私はプレッシャーを感じ、自分の期待が裏切られることに対する恐れを感じました。
物語は世界的に有名なフランスのピアニスト、エレーヌ・グリモーに捧げられていますが、<エレナ>の企画の中で彼女の役割はどのようなものですか。
私はその2年ほど前、彼女の書いた「野性のしらべ」という本を読み彼女に敬服しました。現実はフィクションを超え、この卓越した音楽家は情熱的なヒロインとしての全ての要素を備えているような気がしました。それまで全く別の物語を書いていましたが、突然ひらめいたんです。エレーヌ・グリモーが幻想的なゴシックの世界に迷い込み、戦い、狼が猛獣から彼女を守る物語をね。そこで「エレナと霧の世界のオーケストラ」という物語になりました。
なぜ音楽物語なんですか
私は若い頃から素晴らしい作品が次々に創られたワーグナーの時代に憧れていました。今日でもオペラは素晴らしい音楽形式ですが、演劇の立場に立ってみると21世紀という時代には最早合わないように思うのです。現代は映画、テレビ、インターネットの時代です。挑発的な言い方ですが、もしワーグナーが現在生きていたとしたら特定の人達を対象としたオペラよりもネット上で楽しめる音楽物語を多く創っていただろうという気がします。私はワーグナーと同じプロセスをたどって、言葉と同じように楽器が物語を語るファンタジーの世界を音楽と文章を織り交ぜて創造しようと試みています。ワーグナーは四部作を書いた時そうしました。
エレナの物語の底辺にある英雄ファンタジーの世界との関わりはどのようなものですか。
夢を見れない音楽は何の役にも立ちません。音楽物語は並外れたアドベンチャーに関わって想像の世界を呼び覚まします。現実の世界にない音楽は自由な広がりを見せ、それは好ましいことです。英雄ファンタジーの世界では様々な感情や状況が存分に表出されるので物語を一層パワフルで面白い方へと導いてくれます。
物語の中ではエレナの2つの大きな情熱が見出されます。1つは見事なピアノ演奏を通しての彼女の音楽の世界、もう1つは狼や馬といった動物への深い愛情ですが、何よりもこの2点が強調されているのはなぜですか。
様々な理由がありますが、その1つはそれらが私が価値を置いているものと全く共通するからです。私は音楽を愛し馬を愛しています。また動物とその生育環境の保護のために闘っています。さらに言えば、それはエレナという人物のモデルであるエレーヌ・グリモーにとっても大切なものだからです。

